中小企業の人手不足が深刻化。原因と具体的な対策とは?

中小企業の人手不足が深刻化しています。また少子高齢化の影響で労働生産人口も減少しており、中小企業だけではなく大企業も含め、熾烈な人材獲得争いが起こっています。今回の記事では、なぜ中小企業で人手不足が起こっているのか、また人手不足への具体的な対応についてご紹介していきます。

企業の51%が人手不足を認識

2018年1月の帝国データバンクの調査によると正社員が不足している企業は51.1%にものぼります。正社員の人手不足は、半数を超える企業が認識しており、調査開始の2006年5月以降、最高水準での推移が続いているとのことです。

中小企業庁のデータによると、日本企業の99.7%が中小企業。このため、人手不足の問題は多くの中小企業にとって他人事ではないと言えます。

中小企業の人手不足倒産も問題に

2018年6月の財経新聞によると、現在日本の企業における倒産件数は減少傾向にあるものの、2017年の廃業件数は倒産のおよそ3.5倍です。廃業には後継者問題人手不足があり、ほとんどが後者です。人手不足による倒産は、「人手不足倒産」と呼ばれNHKでも番組の特集が組まれたほどです。

人手不足は、人件費増加などコスト負担の上昇を引き起こし、企業業績への悪影響も懸念されます。有効求人倍率は年々上昇を続けており、人員を確保しにくい現状があります。

2017年12月、有効求人倍率は1.59倍と43年ぶりの高水準を記録しました。さらに2018年7月時点で1.63倍と、上昇を続けています。

参照:厚生労働省「一般職業紹介状況(平成30年7月分)について

なかでも人手不足業種と言われている、建設業、小売業、飲食店・飲食、サービス業、介護事業などの人手不足は深刻です。介護の有効求人倍率は4倍以上にものぼります。

中小企業の人手不足の原因

中小企業の人手不足の主な原因には、人口減少・生産年齢人口の減少と、そもそも求人に応募がない・離職率が高いなどがあります。

人口減少・生産年齢人口の減少

総務省統計局の調査によれば、2018年8月時点での日本の人口は1億2649万人、下記のグラフを見ると、ここ10年で減少の一途を辿っています。

参照:総務省統計局「人口推計(平成30年(2018年)3月確定値,平成30年(2018年)8月概算値) (2018年8月20日公表)

人口の減少は、生産年齢人口(15~64歳)の減少にも直結します。内閣府が示した資料によると、日本の生産年齢人口(15~64歳)は他の先進国に比べて低く、2000年を100とした場合、15年の日本は89.8で1割減少の見込み。一方、アメリカは113.5、イギリスは108.8で、いずれも1割前後増加しています。

前述したように、生産年齢人口が減っているにも関わらず、有効求人倍率は過去最高を記録しており、中小企業だけではなく大企業も、労働力の確保に苦戦している状況です。

会社の内部の理由

少子高齢化や働き方に対する価値観の変化など様々な要因はありますが、そもそも「この企業で働きたい」という人が少なくなれば、その企業の体力は低下していきます。

人手不足の原因の一つに、待遇に対する不満も挙げられます。例えば、労働時間が長くい割に給与が低い、仕事内容がきついなどです。介護や飲食業などのサービス業で顕著な現象と言えるでしょう。

せっかく人材を採用しても、人が定着しなければ意味がありません。労働人口の減少以前に、従業員が働く環境に満足しているかどうかを考える必要があるかもしれません。

飲食店によく見られる原因

ここからは、特に人手不足が深刻だと言われている業界別に、よく見られる原因を見ていきます。

人手不足が深刻な業界のひとつが、アルバイト頼りの飲食店です。飲食店には高校生や大学生などの若者のアルバイトを中心に運営されている店舗があり、若い世代の人口減少が顕著なため、大きな煽りを受けています。

また、仕事が大変なわりに賃金が低いことも人手不足の原因だと言われています。飲食店は社員が少ないことからアルバイトスタッフだけで店舗を回すこともあり、大きな負担があります。一方でアルバイトの時給で見ても全国平均を50円近く下回っており、賃金の上でも魅力的とは言い難い現状があります。

宿泊業によく見られる原因

宿泊業も、人手不足が特に深刻だと言われている業界です。外国人観光客の増加もあり、宿泊施設は需要が右肩上がりになっていますが、その半面宿泊業に従事している人数はなかなか増加していません。厚生労働省の平成27年の雇用動向調査によると、飲食サービス業との合算ですが、離職率は最も高く28.6%もあります。

宿泊業で人手不足に陥る原因は、休日が少ないこと、シフトが変則的なことなどが挙げられます。サービス業である宿泊業は土日祝日の勤務が当たり前であり、勤務シフトも変則的です。業務内容が過酷になることも多く、体調を崩しやすいことから離職率が上がり、人手不足になりやすくなっています。

建設業によく見られる原因

建設業は宿泊業と同様に、東京オリンピックに向けて需要が高まっている業界ですが、人員の確保が追いついていないと言われています。建設業では正社員の人手不足が特に多いと言われており、有効求人倍率は2018年に6倍を超えました。

建設業で人手が足りていない原因は、需要の増加が顕著で対策が間に合っていないこと、若年層からハードでネガティブなイメージを持たれ入職者数が伸びないこと、これにより労働者の平均年齢が上がりパフォーマンスが低下していることなどが挙げられます。

中小企業の人手不足への対策

これまで見てきたように、中小企業だけではなく日本企業全体として人手不足が深刻化しています。有効求人倍率も年々上がっているため、しっかりとした対策を取らなければ、人材を確保できないばかりか、企業から流出してしまう可能性もあります。

まずは職場環境のチェックを

今いる従業員の方の職場環境をチェックし、少しずつでも改善していきましょう。

労働時間は過剰ではないか、人間関係やキャリアに関する悩みはないか、待遇に不満はないかなど、定期的に面談を行ってはいかがでしょう。

あるIT企業では、従業員が働きやすい環境を作るための専門の部署があり、仕事の一つとして職場環境を良くしようという取り組みを行なっています。

生産性向上のための努力を

次に、仕事自体の生産性向上です。主に、長時間労働などを改善するため、無駄な仕事をなくすために、いま行っている業務が本当に最適かどうかを洗い出すのです。

あるIT企業では、コンサルティング会社が入り、生産性向上プロジェクトを実施。従業員が行っている作業を15分単位で記録し、1ヶ月かけて部署内で無駄を洗い出しました。その結果、業務工程が大きく改善されたとの事例があります。

アウトソーシングの活用

人員を増やすことや、派遣社員を受け入れることに抵抗がある場合は、業務自体を一旦アウトソーシングする方法も有効です。最初は外注先への指示など手間がかかるかもしれませんが、その分時間を削減でき、現場の負担は軽減されます。

業務効率化サービスの導入

ロボットやAIの導入などの大々的な設備投資はできなくとも、社内コミュニケーションや業務を円滑化するためのサービスの導入も有効です。

例えば社内SNSの整備は社員同士のコミュニケーションを促進しますし、会計ソフトと連携したレジを使えば会計などのバックオフィス業務も大幅に削減されます。このように、新しいシステムや技術を取り入れることが、長い目で見て人手不足の解消に繋がるかもしれません。

実は減っていない労働人口を活用

上記では生産年齢人口が減少しているとご紹介しましたが、実は実際に労働を行っている「労働人口」は減少していないだけでなく、2012年から2018年まで増加を続けています。男性よりも女性のほうが、若年層よりも高齢者のほうが労働人口を伸ばしており、女性の社会進出が進んでいることなどが理由として考えられます。もし女性や高齢者の採用に消極的だったのであれば、ターゲットを変えて採用活動をすることで優秀な人材を雇用できる可能性があります。

給与体系の見直し

給与体系を見直すことで、労働意欲を増し、生産性の向上や離職率の低下につなげることができます。単純に給料をアップすることや新たにインセンティブを設けるとなると1人あたりの人件費は増すかもしれませんが、離職や採用にかかる費用を削減し、1人あたりの生産性が上がれば投資以上のリターンを得られる可能性が高まります。

その中でもポイントとなるのが、働き方改革の中でも重要なポイントとされている「同一労働同一賃金」です。同じ労働をする従業員には等しい賃金を支払うべきとする考え方で、非正規雇用の従業員を正社員に上げるなどの対策で仕事への納得感を増し、労働環境の改善につなげることができます。

休暇、福利厚生の見直し

十分に休めない職場環境は離職率を上げる原因になり、1人ひとりの生産性を下げ、求職者から魅力的な会社として映りません。完全週休2日制を導入する、有給休暇を取得しやすい環境を整える、自社ならではのユニークな休暇制度を作るなどの対策で、人手不足が解消される可能性が高まります。同じように、福利厚生の内容の見直しもおすすめです。新しい福利厚生の制度を作るだけでなく、今ある福利厚生は本当に従業員に喜ばれているのかを精査することも重要です。

外国人労働者の雇用

日本人に限らず、外国人労働者まで対象を拡げて採用活動を行う方法もあります。ここ10年ほどで、外国人労働者の数が増加していることをご存知でしょうか。2017年10月時点での日本国内での外国人労働者の数は約1,279万人、外国人労働者を雇用している事業所は事業所が約19万5000カ所にものぼります。

外国人労働者を雇用するメリットは、単なる人材確保にとどまりません。

画像:厚生労働省が公表した「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】」より

海外から優秀な人材を採用することは、企業にとって大きなプラスになるでしょう。他の社員への刺激となり、会社の成長を期待する声もあがっています。

海外進出を計画・実施している企業の場合は、現地との関わりをサポートしてくれる橋渡し役としての役割も期待できるでしょう。課題は、日本語を母国語としない方々を受け入れるための社内体制の整備などです。この課題をクリアすれば、グローバル企業としての将来の躍進も期待できるでしょう。

まとめ

これまで見てきたように、中小企業の人手不足は多くの企業が認識しており、今後も継続していくと考えられます。このため、そもそもなぜ人手不足になるのかといった原因を見つめ直し、対策を取る必要があります。

いずれの方法も、一朝一夕で解決できるものではありませんが、時間をかけて根気強く対応しておくことが重要です。人材確保に関しては、プロの人材紹介会社に頼るのも一つの方法です。今回の記事が、中小企業の人手不足解消のご参考になれば幸いです。

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Bridgers編集部
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Bridgers 編集部です。 日本企業が外国人を採用するためのナレッジや、海外ビジネス情報について記事形式でお伝えしていきます。